北欧デンマークに学ぶ人間中心のデジタル社会

2025.03.01 トレンド

NTTデータ経営研究所がデンマークの電子政府の取組みを取り上げ、人間中心のデジタル社会についてレポートしています。デジタル先進国デンマークの成功事例をもとに、日本の電子政府のあり方を見直し、より人間中心のデジタル社会を実現するためのポイントを探ろうとするものです。本記事では、この情報をまとめ、日本の自治体がデジタル化を進める際に考慮すべきポイントを解説します。


デンマークの電子政府成功の要因

デジタルレディネスとは?

NTTデータ経営研究所は「デジタルレディネス(Digital Readiness)」という考え方を提唱しています。これは、デジタル技術が単なる手段ではなく、人々の生活や経済活動に自然に溶け込むことが重要であるという考えです。

デンマークは、国連の電子政府ランキングで2018年から4回連続で世界1位を獲得しています。日本とほぼ同時期にデジタル化を進めたものの、その成果には大きな差が生じています。デンマークがなぜ成功し、日本が遅れを取っているのかを紐解きます。

人間「を」中心にデザイン

デンマークの電子政府の成功の鍵の一つは、ユーザー体験を重視した「人間『を』中心にデザインする」ことです。行政サービスを使いやすくするために、以下の取り組みが行われています。

  • 電子政府ポータルサイト「borger.dk」
    • 出生届、税金申告、診察予約など、行政手続きをオンラインで完結可能。
    • ユーザーの負担を最小限に抑えるインターフェース。

一方で、日本ではオンラインサービスが分断されており、複数のIDや個人情報の入力が必要になるなど、利便性に欠ける点が指摘されています。

日本における人間中心デザインの取り組み

NTTデータ経営研究所は、総務省のフロントヤード改革プロジェクトの一環として三重県明和町でDXを支援しています。その取り組みのポイントは以下の3つです。

  1. 住民のユーザー体験をベースにサービスを設計
  2. 理想の姿を先に描き、バックキャスト方式でサービスを開発
  3. 住民アンバサダーの活用によるDX推進

住民をサービスの共創者とし、開発の段階から意見を取り入れることで、より使いやすい行政サービスを目指しています。

人間「が」中心にデザイン

もう一つの成功要因は「人間『が』中心にデザインすること」、つまり行政と市民の関係性を成熟させることです。

日本では行政がサービスを作り、住民がそれを受け取る関係性が主流ですが、この方式では住民の真のニーズを十分に反映できません。デンマークでは「リビングラボ」という手法を用い、市民が企画段階から関与する仕組みを採用しています。

日本におけるリビングラボの導入

NTTデータ経営研究所は、山形県酒田市に「酒田リビングラボ」を創設し、住民主体の課題解決の場を提供しています。

この取り組みでは、行政がトップダウンで決めるのではなく、住民の声をもとに地域サービスを共創していくことを目指します。こうした柔軟な行政運営を「ジェネラティブ・ガバナンス」と名付け、変化に適応できる仕組みの構築を進めています。


日本の電子政府実現に向けた提言

自治体の意識改革が鍵

デジタル化を推進するためには、デジタル推進担当者だけでなく、自治体全体の意識改革が必要です。

  • 窓口業務をデジタル対応に変革することが不可欠
  • 職員のマインドセットを変え、前向きに取り組む環境を作る

デンマークの成功事例を日本流にカスタマイズ

デンマークの方法をそのまま導入するのではなく、日本独自のやり方で電子政府を発展させることが重要です。そのために、NTTデータ経営研究所は「Social Innovation Alliance Japan Denmark」を設立し、デジタル社会の発展に向けたプログラムを開発しています。

「失われた30年」を突破するために、自治体との協力を強化し、日本型の電子政府を実現することが求められています。


まとめ

デンマークの成功事例から、日本の電子政府のあり方を学ぶことで、より人間中心のデジタル社会を実現する道が見えてきます。

  • デジタルは手段であり、生活に溶け込むことが重要
  • ユーザー体験を重視した設計が鍵
  • 市民と行政の関係性を成熟させることが必要
  • 日本独自の方法で電子政府を進化させるべき

これらのポイントを意識しながら、日本の自治体がデジタル社会の実現に向けた取り組みを進めていくことが求められています。

参照:https://www.projectdesign.jp/articles/60b34270-9a8a-41cf-8697-dd8d06f731f5

Organizer

Yukey
YukeyCatalyst & Director
セールスマーケティング、エンジニアリング、デザインのすべての業務経験をもち、ベンチャー企業特有の僅少リソースでの事業立ち上げに強みを持つ。活用できるナレッジを組み合わせて戦略を練り、自らサービスデザインを行うことで、初期顧客を開拓する。ビジョン経営にも知見があり、社内の制度設計や組織開発、チームの素質を活かした巻き込み型のリーダーシップを武器に、内外の改革を推進する。2022年、国内ビジネススクールにてMBA取得済み、2025年、国内理系大学院にて技術経営課程在籍。